腹話術伝道の学び

No.31「キャラクターと台詞」

「人の口のことばは深い水のようだ。知恵の泉はわいて流れる川のようだ。」

箴言18章4節

腹話術の台本は、会話で成り立っています。会話ですから、当然、術者 と人形という二つの人格のことばのやりとりです。このことを忘れてしま うと、術者は、まるでひとりでストーリーを語っているかのように、人形 の台詞に意味をもたせることができません。ほとんど「相づち」をうた せて、話を進ませようとしてしまうのです。そうなってしまう大きな原因 の一つは、術者自身が、自分の人形の「キャラクター」というものに心 を向けていない、ということです。人形の「キャラクター」が明確でない と、その台詞も薄っぺらなものになり、従って、会話のおもしろさをかも しだすことができません。(もし、キャラクターをあまり気にしない腹話 術にしたいなら、たくさんの声色を使う「ボイス・イリュージョン」の 世界に入らなければならないでしょう。けれども、それは人形を1、2 体しか使わないアマチュア腹話術師にはむずかしいことです。)

そこで、今回は、人形の台詞とキャラクターの関係について、どうした ら深みのあることばを語らせることができるかを考えてみましょう。

人形の外枠の設定

まず、テキスト『腹話術の基礎』の10ページを開けてください。そこ には「人形のかたち」の彫りを深くするための10か条があげられていま す。その中で、(1)性別、年齢(2)家族構成(3)生まれ育った場 所、現在の場所(4)術者との関係、は人形のキャラクターを設定する ために最低限必要な条件です。その中で、特に「年齢」は、むずかしいこ とでしょう。なぜなら、人形の大きさや顔立ちを見てしまうと、つい幼 い年齢を想像してしまうからです。もし5歳と設定してしまうと、その人 形で話す内容と使える台詞が非常に限られてしまいます。(もちろん、幼 稚園専門で演じるのでしたら結構ですが)そこで、発想を転換してみる と、そもそも人形には定まった年齢というのはありませんから、ある程 度は、自由に設定できるものです。顔は幼いようでも、ませた10歳の子 どもにもなれるのです。(もちろん大人のキャラにはなれませんが)

それから「家族構成」は、「術者との関係」とも関連して、重要です。 その人形は、術者の家の同居人なのか、隣の家のお友達なのか、で台詞 も違ってきます。また「生まれ育ち」と「今の住所」も大切です。台詞の 中にわざと方言を入れてみたりするとおもしろいですし、「なぜ今の所に 移ってきたのか」も、そこに人形の気持ちを表現する余地が出てきます。

人形の内面の設定

次に、(5)から(10)を見ると、人形の心の状態を引き出すような 項目があります。「性格や癖」は、はっきりしていなければなりません。

「趣味や能力」も明確にしましょう。次の「仕事、立場」と「家族、友 人関係」は関連性のあるものです。キャリアがどんなもので、どんなふう に生きてきたか、人生観や今の心境があらわれる項目です。そうして「周 りの評価、自分の評価」は、どのように、人から見られているか、それを 自分はどう感じているか、自分のことをどう思っているか、など、心の深 いところの状態を浮き彫りにしていく要素となるのです。

キャラクターを意識した台本作り

人形のキャラクターのイメージが大体つかめたら、台本を書く前にまず 考えてみましょう。「こんな人物(人形)が、この話に接したら、まずど んなことを考えるだろう。(たとえば)イエス様のこのことばにどう反応 するだろう。何に疑問をもつだろう。どんな心の葛藤を覚えるだろう。イ エス様に対して答えた人物の言動に共感できるだろうか。それとも反発す るだろうか・・・」という具合に、あれこれと思いめぐらすのです。そう すると、実際に台本を書き始めた時、「なぜ、このとき、人形はこういう 台詞を言ったのか」の隠れた理由づけができます。その理由というのは、 必ずしもすべてを観客に明らかにする必要はありませんが、少なくとも、 術者は納得していなければなりません。それが「ことばの深み」なので す。

2014年5月30日

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