腹話術伝道の学び

No.52「生きた人形の動き②」

- 感情のこもった人形の台詞 -

「嘆きなさい。悲しみなさい。泣きなさい。あなたがたの笑いを悲 しみに、喜びを憂いに変えなさい。

ヤコブの手紙4章9節

腹話術では人形の台詞と動きは密接に関係しています。人形の動きが生き生 きとするためには、人形の台詞そのものが、感情のこもったものでなくてはな りません。ですから、人形をどう動かすかを考える以前に、まずは、自分の台 本を何度も読み直して、「この台詞は人形の心を表現しているかどうか」を考 えてみることが大切です。そのような推敲をするには、全く新しい台本を書き 始めるよりも、今までに書いたものを叩き台にした方が近道でしょう。

そこで、今回は、どのような点を考慮して手を入れていったら良いか、幾つ かのポイントをあげてみたいと思います。

感情が表現されているかどうかを見る

まず、出来上がった台本を全部読み直してみて、特に人形の台詞は心の状態 を表現していることばであるかどうかを考えます。たとえば、感情を表わす「う れしい」「悲しい」「楽しい」「驚いた」「がっかりした」「心配だ」「不安だ」「お もしろい」「うきうきする」「口惜しい」等々の心理を含んでいる台詞かどうか を確認してください。もし、ほとんどが物語のあらすじにただ反応しているだ けの台詞でしたら、その台本は、もう一度書き直す必要があります。なぜなら、 その場合の問題は、そもそも話の展開の仕方において、術者の台詞が、人形の 心に語りかけたり、感情を引き出したりするものではない場合が多いからです。

物語を人形と一緒に読んで会話する

台本にした物語が、聖書であっても童話であっても構いません。みなさんが 「これは是非台本にしたい」と思ったものでしょうから、まずは、台本にする 前に、その話を「人形とふたりで語り合いながら読む」作業から始めてください。ここでは、「術者である自分と人形は別人格」であることを強く自覚して いただきたいのです。同じ箇所でも、自分はこう感じるけれども、人形はどう なのだろう、と聞いてみることです。まるで親子で絵本を読んでいる感覚で、 「この箇所は私はこう感じるけど、あなたはどう?」と人形に語りかけるので す。そして、あくまでも、人形が「これはいいことだよね」とか「悪いことだ よね」という意見を言うだけに終わらないように、「どうしてそう思うの?」 「もしあなただったら、この時どうする?それはどう感じるから?」というふ うに、“考える”ことよりも“感じる”ことを重要視して質問することです。 もちろん、術者も同時に、自分の考えを述べるよりも、感じることを表現して みましょう。人間は、そもそも、頭で知っていることよりも、心の底で信じ、 感じていることをもとにことばを発し、行動を起こすものです。その点では、 人形も同じだと理解してください。

物語の世界に入り、想像を膨らませる

台本が豊かになるためには、上記のように、術者と人形が物語の世界に入り 込み、登場人物に感情移入していくことが必要です。そして、さらには、そこ に文字として書いてない部分も想像を働かせて「きっと、この時、この人はこ んな言い方をしたに違いないね」とか「実は心の中では、こんなことを感じた り、考えたりしていたんじゃないかな」などと、“行間を読む”ことも大切で す。そうすると、いざ台本として話を組み立てる時に、構成が立体的になり、 クライマックスなども作りやすくなるからです。

台本を書く

以上、ふたりで十分に物語を味わったら、いよいよ台本書きにとりかかりま しょう。といっても、すぐにペンを握るのではなく、頭の中で、「一番観客(聴 衆)に伝えたいことは何か」を意識して、話の始め方、展開の仕方、クライマ ックス、話の結論(内容によっては“落ち”)を思い描く時間が必要です。 そうして、ほぼ輪郭が定まったら、書き始めてください。きっとスムーズに書 き進めることができるでしょう。

このように、何事も「急がば回れ」ですので、じっくり台本を見直す作業に 時間をかけていただきたいと思います。大事なことは、みなさん が、その物語を十分に楽しみ味わっているかということなのです。

2018 年7月27日

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